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 HOME >> micro bubble research front line >> 続マイクロバブル研究の壁

大成博文 (徳山工業高等専門学校





1.はじめに
 
 
 今世紀初頭から、マイクロバブル技術は急速に進歩し始めた。その様相は、「百匹目の猿現象」1)によく似ている。これは、宮崎県の幸島で、あるメス猿が芋を洗って食べ始めたことに端を発し、それが徐々に増え始めて、芋を洗って食べる猿が100匹目に達すると、たちまち島中に、そして全国の猿たちにと広がっていったという事例に基づき、物事が一定量を超えると急速に伝播普及する「例え」として知られている。インターネットで「マイクロバブル」を検索すると、数年前は数十件、昨年は2000件、そして現在は40000件を超えるまでになっており、その関心の高さや取り組みの多さが指数関数的に増えており、一種の社会現象になりつつある。
 このマイクロバブル猿現象に関連する情報として、筆者は、混相流学会第28回レクチャーシリーズにおいて「マイクロバブル技術の魅力と可能性」2)を発表し、同学会第1回マイクロ・ナノバブル研究会において「マイクロバブル研究における壁」3)を報告した。以来、ほぼ2年余が経過したが、この間、マイクロバブルに関する技術開発についての期待は膨らむ一方であり、なかには、「近い将来、バブル景気が起こるかもしれない」という少々スケールの大きい期待が示されるまでになり、そのために、「極小泡新ビジネスが泡立つ」ことが切に望まれている4)

 これらの動向を俯瞰すると、マイクロバブルに関する大規模な社会的および国民的理解が開始されているようであり、その基盤形成となるマイクロバブル研究のより一層の進化と領域の拡大、さらには、新規の技術開発の重要性がますます高まっている。
 以上を踏まえ、本論では、マイクロバブルの科学研究における到達点と課題、新領域、さらには、技術開発における新たな可能性と展望を明らかにする。
図1 俵山温泉の白猿(木島康弘氏提供)




2.マイクロバブル研究における「壁」と「領域」



上述のマイクロバブル研究に関する9つの「壁」について、より詳しく解説するとともに、その後の検討結果を紹介する。




2.1 第1の壁


 この壁は、「マイクロな気泡とともに、いかに微細な気泡を発生させることで、酸素吸収効率を高めるか」であった。



 もともと、マイクロバブル発生装置の開発は、下水処理用のエアレーション装置の開発依頼に端を発したことであったが、本開発では、以下の概念設計をたどった。
@マイクロバブル(「ミリバブル(図2参照)」以上の径を有する気泡)を発生させながら、同時にマイクロバブルを発生させる。これには、気液二相流体の混合・せん断方式を利用する。
Aマクロバブルとマイクロバブルの両方を発生させることによって、主として、前者に水域内の循環流形成させ、後者に気体吸収l効率を向上させる役割を担わせた。
Bマクロバブルの発生量に対するマイクロバブルの発生量は、たかだか数パーセントであり、この比率を向上させる。
Cそのために、気液混合界面おける「せん断力」を増加させることでマイクロバブルの発生率をいかにより効率よく高めるかを工夫する。
 
 結果的に、「W1型」および「W2型」と呼ばれる装置開発がなされたが、Bの効率を大幅に高めることはできなかった。この壁を突破するには、最低、マクロバブルおよびマイクロバブル比を3以下にすることが重要であり、そのためには、以下の、より洗練された工夫がなされる必要があるように思われる。
@より強力な気液二相の混合・せん断方式の発明と混合・せん断面積を増加させる。
A小型化、コンパクト化、省エネルギー化を図る。
B低価格化を実現する。






                図2 気泡の分類




2.2 第2の壁



この壁は、「数十μm以下の気泡径を有するマイクロバブルを大量に発生させ、その際の気液比を向上させることを実現すること」であった。





(1)発生方式

 大別して、衝突従来のマイクロバブルの発生方式には、次の4つがある。それらの発生方式の詳細については省略するが、5つ目として著者らが開発した「超高速旋回方式」については若干の説明を加える。

a)気液二相流体混合・せん断方式

b)圧力加減制御方式

c)細孔方式

d)超音波方式
 
e)超高速旋回方式

 気液二相流体を超高速旋回させることによって、装置内で液体と気体の遠向心分離を実現させ、装置中心部に形成された旋回空洞部を装置出口前後における旋回速度差でせん断することを基本原理としている。この方式の優れた点は、流体力学的に安定して大量のマイクロバブルを発生させることにあり、マイクロバブルの発生点は、旋回速度差によってマイクロメートルサイズに制御されることが重要である。
 図3に、筆者によって開発されたマイクロバブル発生装置(M2-L型)を例示する。また、図4に、アコヤガイ筏においてマイクロバブルが海水中で勢いよく発生している様子を示す(NHK「おはよう日本」より)。この場合、4つのマイクロバブル発生装置から勢いよく白い煙状に発生しているのがマイクロバブルであり、これが直接アコヤガイに供給されることによって、斃死防止、成長促進、真珠層形成促進などが実現され、結果として大幅な生産額の増加が可能となった。
 ここで重要なことは、マイクロバブルの発生量や基本的性質が装置内の旋回速度に依存することが推測されることである。たとえば、M2-L型のマイクロバブル発生装置を圧力0.2MP、流量毎分20l程度で運転した場合の装置内における気液二相流体の旋回速度は、毎秒400〜600回転にも達し、この超高速旋回を伴う気液界面における強力な静電摩擦がマイクロバブルの発生に重要な役割を果たしていることが注目される。


(2)壁突破の課題

 さて、重要な問題は、どのようにして上記の壁を突破するかであるが、それには、次の段階的発展が考えられる。

@第1段階
 上述のマイクロバブル発生装置を用いた場合、マイクロバブルと液体流量の比は1/7〜1/15程度(マイクロバブル発生量は毎分11を基準とする)であり、これを2、3倍に増加させることを検討する。これには、使用するポンプ圧を増加させる、あるいは、気体吸入の工夫を行うなど工夫が検討されている。

A第2段階
 マイクロバブルの発生量をポンプ流量と同程度(毎分数l〜20l)にすることを可能とすることをめざす開発である。容易には、装置の大型化、複数による有効な組み合わせ、発生地点数や発生面積の増加、上述の圧力加減方式の組み合わせなどが考えられ、それらの実践的検証が期待される。

B第3段階
 ポンプ流量の10倍以上(毎分100l以上)のマイクロバブルを発生させることを可能とする開発である。
 これには、上述の方式とはまったく異なる概念と技術的ブレイクスルーが必要と思われるが、残念ながら、その開発イメージすら出現していない。しかし、これが実現すれば、下水および化学プランクトンにおいて重要な技術革新がなされる可能性があり、今後の発展が期待される。


(3)開発目的と整合性

 周知のように、技術開発は、ある目的に対して行われるものであり、その基本は、マイクロバブル技術においても適用されるはずである。そうであれば、まず、マイクロバブルの「発生装置」や発生の「量と質」が、その目的に適合するかどうかが問われることになる。実際の現場では、この目的達成ができなければ、その技術の導入は何の役にも立たない。ところが、一部に、この現場の目的とは無関係の状態でマイクロバブルの発生量が「多い、少ない」、「濃い、薄い」という議論がなされているようであるが、それのみでは、おそらくマイクロバブル技術の長期的発展には寄与しないのではないかと思われる。そこで、具体例を表1に示すが、この場合、決定的に重要なことは、対象とする目的が、マイクロバブルの「質」によって達成されるかどうかであり、それを踏まえて量的課題を達成するために、さまざまな技術的工夫がなされていることが明らかである。





          
図3 マイクロバブル発生装置(M2-L型)         図4 アコヤガイ筏で発生しているMB



表1 マイクロバブル技術における目的と適合性





2.3 第3の壁



この壁は、「マイクロバブルによるカキの成長促進、除菌のメカニズムの解明」であった。




(1)成長促進

 1999年夏、広島江田島湾で、赤潮と酸欠によるカキの斃死防止のためにマイクロバブルが連日供給された。この過程で、カキを観察していると、マイクロバブル供給時のカキが通常の2倍以上開口していることが明らかとなった。これは、カキがマイクロバブルに何らかの反応をしている証拠であると思い、カキの生態を注意深く観察すると、著しい成長を遂げていることが明らかとなった。これは、とくに稚貝段階で顕著であり、ホタテやアコヤガイにおいても同一の成長ぶりが観察された。この成長の度合いは、大雑把にいうと、マイクロバブルを与えない場合と比較して2倍の重量比となる程度であり、同時に、斃死に強い、「元気」なカキとして育った。現場のカキおよび真珠業者は、これらを「20〜30年前のものと同じだ」といって喜んだ。図5に、マイクロバブルを与えた広島カキの成長変化を示すが、稚貝段階では、非常に高い成長を示していることが注目される6)
 そこで、この成長促進が「なぜ起こるか」が問題となった。カキの内部形態は、消化系 、呼吸系 、循環系 、神経系 、排泄系 、生殖系の6つに大別される7)。カキの成長には、前3者が直接関係すると思われることから、それぞれについてのマイクロバブル効果を考察する。
 まず、消化系では、鰓の繊毛運動によって植物プランクトンが口へと運ばれる。マイクロバブルの供給によってカキの口が大きく開き、海水の取り込み量が増大するとともに、鰓の繊毛運動も活発となり、餌となる植物プランクトンの取り込み量が増大し、それが成長に寄与したと考えられる。現に、同時期に餌の豊富な漁場と餌の少ない漁場の両方で、マイクロバブルの「供給なし・ある」の場合の成長比較を行ったが、その差は歴然としていた。これより、餌の少ない漁場においても、マイクロバブルを供給すると1回の鰓への取り込み量がかなり増えていることが推測された。
 第2に、呼吸系では、体内において酸素消費が行われ、炭酸ガスが発生するが、マイクロバブルの供給で溶存酸素濃度が高まり6)、カキのなかから、活発な酸素消費がなされて炭酸ガスが放出される様子が現場で観察された。マイクロバブル発生装置は水深10mの地点に設置されたが、そこで発生したマイクロバブルのほとんどは海中で溶解・消滅することから、カキ筏下では、カキの殻内に溜まった、このガスが比較的大きくなって発生して多数浮上してきた。
 第3に、循環系では心臓が中心となり、血管は開放系であることから、その血液成分は環境海水とほぼ同じとされている。海水マイクロバブルは、この血管のなかに送り込まれるが、そのときの血流量が計測され、2倍前後の血流促進が起こることが明らかとなった(図68)。また、この促進においては、平均血流量の増大、心拍周期はほぼ不変で、振幅が増大するという特徴も見出された9)
 以上を総合すると、マイクロバブルの供給によって、呼吸系における酸素消費量が増大し、同時に、血流促進が起こることで新陳代謝が活発となり、餌の吸い込み量も増えることで、抜群の成長システムが構築されたと考えられる。
 次に、この血流促進と海水中の溶存酸素濃度の相互関係が調べられた。その結果、1)溶存酸素濃度が非常に低い場合(いわゆる「酸欠状態」)と、2)溶存酸素濃度が飽和状態となる場合の両方において、マイクロバブルによる血流促進が起こることが判明した。実際、後者の場合は、溶存酸素濃度の変化とは無関係に血流変化が起こることから、この血流促進の原因には、溶存酸素濃度とは別の違う重要な要素があるのではないかと考えられるようになった。
 ところで、これらの成長促進、酸素吸収率の増大、血流促進、プランクトン取り込み量の増大などは、カキの成育にとって非常に重要なことであり、これらを総合して、マイクロバブルの「生理活性効果」と呼ぶことにし、以後のマイクロバブル技術の適用においては、この効果の検証が非常に重要な指標となった。
 

(2)除菌効果

 2000年夏には、マイクロバブルによる「成長促進」、「除菌」効果によって、広島県史上初、460年ぶりに「夏ガキ」が出荷されるようになった。広島養殖カキは、「加熱食用」と「生食用」の2つに分けられて出荷されるが、後者の場合は、あらかじめ認定された「清浄海域」でのカキ養殖が義務付けられる。この区別は、カキに付着する細菌数によって決められており、後者の場合、カキ100gあたり、一般細菌数で5万個以下、大腸菌数で300個以下とされている。広島カキ養殖業者のT氏提供の保健所検査データ(1999年)のデータによれば、マイクロバブルを使用せず、塩素殺菌のみで、一般細菌数が1万個、大腸菌が48個であったことから、これは生食としての基準に相当していた。図7に示されるように、筏から採取した殻付カキを水槽に入れ、約15時間洗浄した。このとき、水面に浮かんでいるのは白い泡であり、これに黒い有機物が多数付着していた。この洗浄後のカキの保有細菌数を検査すると、2回とも、一般細菌数「300個以下および検出されず」、大腸菌「18個以下および検出されず」という完全除菌がなされていた。また、図8には、カキの剥き身にマイクロバブルを直接与えたときの様子であるが、数秒で、このような状態になり、さらにカキ表面が洗浄され、それを食べると舌触りも変化していた。
 この完璧な除菌によって(実際は、2000年に、同じ検査が合計6回行われ、6回とも同じ結果がでたことで)、広島県史上初の夏ガキ出荷が可能となり、そのために県条例の改定も行われた。また、その後、食中毒の原因となるSRSV(現在は、「ノロウイルス」と呼ばれている)を探し、マイクロバブルの除菌効果を確認しようとしたが、それが見出せず、やむなく未検証のままで終わった。
 さて、ここで重要なことは、結果として、マイクロバブルによる操作で、カキ内の検出細菌数をゼロに近い状態を実現したが、この時点では、以下の2点が不明であったために、「殺菌」ではなく、「除菌」という記述を用いた。
 @生体の物質代謝が進んで元気になると、生体内から細菌が剥がれやすくなることが知られているが、それがマイクロバブルを与えることによって、どの程度になるか、その定量化ができなかった。
 Aマイクロバブルの直接的な「殺菌効果」を詳しく調べることができなかった。
 しかし、その後の推移を踏まえると、「食の安全安心」を求める声は、ますます強まっており、このAの課題を解明することが非常に重要となっている。その際、次の具体的検討がなされる必要がある。
 1)マイクロバブルの発生に用いる液体と気体の組み合わせを明確にする。
 海水+空気マイクロバブル、オゾンマイクロバブル、淡水+空気マイクロバブル、オゾンマイクロバブルなど、殺菌対象と環境水の両者で最適な組み合わせ条件が存在すると思われることから、その実際を明らかにする。
 2)上記の組み合わせ+低濃度の殺菌水
 アルコール水など、殺菌効果を有する薬品水を低濃度状態で加え、マイクロバブルとの相乗的な効果で殺菌効果が発揮できるかどうかの検証を行う。
 この1)、2)を踏まえ、具体的な殺菌装置を開発することで、本壁の「部分的突破」が可能となるように思われる。




           
   図5 アコヤガイ筏で発生しているマイクロバブル              図6 カキの血流量変化

         
             
     図7 殻付きカキの洗浄と消毒の様子                図8 カキ剥き身の洗浄の様子
         


2.4 第4の壁



この壁は、「マイクロバブルによるホタテの成長促進、体質改善、金属物質の除去メカニズムの解明」であった。



 ホタテ養殖へのマイクロバブル技術の適用は、2000年から始まった。実験地は噴火湾であり、長万部漁協の協力を得た。本実験においては、前年度から始まったカキ養殖と同じ成果が得られるかどうかの検証がなされたが、ホタテ漁固有の問題も存在していた。それは、ホタテ稚貝の分散時における斃死と半成貝の耳吊作業時における斃死問題の解決であった。これらの斃死は、前者で1、2割り、後者では3、4割にも達していたことから、深刻な問題となっていた。図9に耳吊作業が終了して水槽に入れられた時のホタテがマイクロバブルで開口している様子を示す。
 そこで、これらの斃死防止にマイクロバブルを用いることにして、分散用および水槽用装置を開発した。その結果は良好であり、これらの斃死問題は、すぐに解決した。同時に、稚貝分散時に、港の低溶存酸素濃度水を用いている業者もあり、それが稚貝斃死の原因となっていることも明らかとなった。また、耳吊作業時には、この斃死を回避するために夜通し作業が行われていたが、本マイクロバブルによる斃死防止が可能となったことで、その夜間作業が廃止された。
 また、ホタテの稚貝の成長においては、カキと同じで、養殖期間の半減を可能とする成長特性を示した。同時に、ホタテの体質改善がなされ、図10に示されるように、マイクロバブルが供給されたホタテのグリコーゲン含有量が増大し(長万部漁協提供)、そのホタテ貝柱は柔らかく、そして甘く美味しいという味覚を示した。
 もう一つの注目点は、ホタテのウロに蓄積されるカドミウムが大幅に減少したことである。実際は、マイクロバブルを供給した貝と非供給の貝を1ヶ月間水槽で飼育し、両者を比較したところ、マイクロバブル供給貝においてカドミウム含有量が半減していたのである。この事実は、「金属」という生物にとっては「非適応物質」を体内濃縮するという、いわゆる「生物濃縮」の逆の過程が発生していることを意味することから、事は重大であるが、本結果は、もしかしたら、生物史における最初の「重要な壁」の突破を遂げたことを示唆しているのかもしれない。これらを踏まえ、今後、他の生物においてもより詳しい検証がなされることが切に期待される。




                   
            図9 耳吊ホタテの開口の様子          図10 グリコーゲン含有量比較  
      


2.5 第5の壁



この壁は、「マイクロバブルによる真珠層形成促進のメカニズムの解明」であった。




 真珠養殖へのマイクロバブル技術の適用は2001年から始まった。三重県では、前年度に国産貝がほとんど全滅に近い斃死となり、その問題解決が文字通り「死活問題」となっていた。この斃死の原因としては、さまざまな諸説があったが、その最有力説は、アコヤガイの貝柱が赤くなって死ぬことで「赤変病」と呼ばれるものであり、これは、「特殊」なウイルスによってもたらされるとされていた(しかし、そのウイルスの正体は未だに明らかにされていない)。
 現場では、このウイルスの正体を明らかにすることよりも、とにかく、赤変病による斃死を回避することが優先課題であったことから、マイクロバブルで、これを回避することにした。基本は、マイクロバブルの供給によって体力強化、体質改善を行い、斃死を回避することが優先課題であったことから、マイクロバブルで、これを回避することにした。基本は、マイクロバブル供給によって体力強化、体質改善を行い、斃死を回避できる強い貝を育てることであった。そこで、春からマイクロバブルを定期的に真珠筏に吊るされたアコヤガイに供給した。
 このとき、この斃死に関係する次の重要な問題が明らかとなあった。
 アコヤガイが大量斃死する時期は、例年8月中旬過ぎから9月にかけてであったが、それは最終局面の出来事であり、深刻な問題は、6,7月にも発生していた。それは、この時期に大雨が降り、それが大量に栄養塩とともに海に流れ込むと植物プランクトンを大量に発生させ、それが引き金となって、その死滅時に、酸欠現象が発生して、貝がその都度弱ることであった。この酸欠は、数日間で解消されることから、なかなか見出せない現象であるが、これが大雨のたびに繰り返されると貝は確実に弱まり、元気を失うことになる。現に、この時期に一部の貝が斃死しているが、マイクロバブルを与えた貝は元気で斃死は皆無に近かった。真珠養殖業者は、この元気度をアコヤガイのグリコーゲン形成層で判断するが、図11に示されるように、アコヤガイの身の上に白く膜状に形成されているのがそれであり、これが白く厚いのがよいとされている。
 斃死問題回避の次の課題は、真珠層の形成促進であった。近年、真珠の巻きが薄く(真珠業者は、真珠層が核に形成されることを「巻き」という)、その厚さは平均0.5mmほどであった。これでは、核の上の傷やムラが、そのまま透けて見えるために、品質のよい真珠を得ることはできなかった。
 そこで、マイクロバブルによる真珠層形成促進がどのようにして実現されるかについて、次の検討がなされた。
 @稚貝から成長したアコヤガイは、2年目あるいは3年目に「挿核」される。これは、真珠状のドブ貝を卵抜きされた卵巣に入れる作業のことをいうが、このとき、まず完全な「卵抜き」が重要になる。これが不完全であると、真珠の色が悪く、傷もできやすいといわれている。もともと、アコヤガイの排卵は、海の温度が18度以上になると自然に行われるが、この時期まで待つとアコヤガイの挿核を一挙にせねばならず、それができないので、春から挿核を開始するために、水槽内で加温し、それにオゾンを加えて成樹を与え、排卵を誘発させていた。ところが、オゾンを与えると身体を痛め、3週間以上海水内で養生しないと挿核ができないほどであった。このオゾンの代わりにマイクロバブルを用いて水槽内で「卵抜き」に成功し、しかもすぐに挿核もできるようになった。図12に挿核されたアコヤガイを示す。
 Aとくに、挿核前日において、マイクロバブルを一昼夜供給することによって、挿核が非常にやりやすくなった。周知のように、挿核は熟練作業であり、それによって真珠層の形成の良し悪しが決まることでもあり、その技能が問われる問題であったが、これがより改善されることになった。
 B挿核後にマイクロバブルを供給するかどうか、これが重大な問題となった。なぜなら、挿核後のアコヤガイを元気にすると、せっかく入れた核を吐き出すからであり、挿核後の約20日間は、そっと海水中で自然養成するのがよいとされていた。この間に、挿核された珠に外套膜切片を入れ、それが溶けることによって真珠層の形成開始がなされるが、この形成促進がマイクロバブルによって誘発されることが見出された。この時期におけるマイクロバブル供給が、その後の真珠層の巻きにも影響を与えるようで、最終的には、1.5〜2mmの真珠層形成がなされるようになり、みごとな真珠が生産されることになった。また、この間にマイクロバブルを供給しないまま、沖に出してからマイクロバブルを供給しても、なかなか巻きが伸展しないことも明らかとなった。
 以上、@〜Bの結果を踏まえると、マイクロバブルは、筋肉をやわらかくし、そして排卵刺激にも有効であり、さらには、真珠層形成促進にも重要な役割を果たしていることが明らかとなった。この壁の突破は、約100年も続いてきた真珠養殖のいくつもの常識を覆すものであり、さまざまな葛藤を経て実現された。この真珠養殖業者の場合、父親は革新的、息子は保守的、母親は両者を見守るという位置関係にあったが、それぞれが重要な役割を果たすことで、立派に壁を突破し、3年目で、マイクロバブル技術を使用する前の年収の25倍を実現させた。




               

         図11 グリコーゲンが豊富なアコヤガイ              図12 挿核されたアコヤガイ



2.6 第6の壁



            この壁は、以下の2点にあった。
              @貯水池下層の無酸素水域の有酸素化による水質浄化のメカニズムの解明、下層水域に溶出した
                金属イオンの除去とその有効利用、水質浄化とともに植物育成など積極的な有効利用法の開発
              Aアオコの完全除去システムの開発と実用化




 
ダム貯水池の水質浄化を、1980年代半ばから取り組んだ。この貯水池の汚濁は、表層の植物プランクトン(その一種は「アオコ」とも呼ばれている)の異常発生と下層の無酸素水域の形成に大別される。前者では、栄養塩の流入が直接的な引き金となることから、それを防止することが何よりも肝要である。しかし、それがなかなか困難である場合には、それを含む水が悪臭を放ち、時には、毒性を有するプランクトンが発生することも知られている。また、後者は、そのプランクトンが異常発生した後に死滅し、そのときに大量に酸素を奪うことでダムの下層から無酸素化が始まる汚濁である。この無酸素化は、水域内の金属イオンを溶出させ、ますます水質悪化を進行させる。近年、この下層が無酸素化するダム貯水池が徐々に増加しており、その改善が重要な課題となっている。 

 そこで、上記の課題を具体的に検討することで「第6の壁」の突破を検討する。

(1)貯水池下層の有酸素化による水質浄化とそのメカニズムの解明
 ダム貯水池の下層が無酸素化されると、従来の上層と下層をかき混ぜる方式が使用できなくなる。それは、下層の無酸素水域をかき乱すことによって、ダム貯水池全体が無酸素化され、各種のダム用水が使用不可になる恐れがあるからである。そこで、上下層を同時にかき混ぜないで、下層のみにマイクロバブルを供給し、その有酸素化を図ることで貯水池全体の水質浄化を実現する実験がなされてきた10)。この場合、下層の無酸素水域にマイクロバブル発生装置を設置し、直接水中ポンプで周囲の同温度水を吸収し、マイクロバブルとともに噴出することが重要であり、これによって、マイクロバブルは水平方向に拡散することで、溶存酸素濃度の改善が図られた。また、この改善速度を増大させるために、マイクロバブル発生装置を小型化し、1台のポンプで50〜100機の発生を可能とする改良を行い、さらには、空気の代わりに純酸素発生器を用いて、純酸素マイクロバブルを発生させ、効率を向上させた。
 その結果、ダム貯水池下層の無酸素水域の1点に装置を配備・稼動することで、上下流および左右の水平方向にマイクロバブルおよびそれが溶解した水塊を拡散させ、徐々に下層の無酸素水域の有酸素化が可能となり、同時に、無酸素水域内に溶出していた金属イオンがその有酸素化とともに消失した。さらに、この下層の水質改善は上層のプランクトン減少にも寄与し、ダム貯水池全体の水質浄化が可能となった事例も出現した(詳しくは道奥らの実験結果10)を参照)。しかし、この金属イオン消失と水質浄化の詳しいメカニズムについては十分な解明には至っていない。また、金属イオンの有効利用法も見出されていない。
 同時に、マイクロバブル発生量の増加、小型化による格段の高性能化、省エネ化による壁突破も重要な課題といえる。

(2)アオコの除去システムの開発
 アオコによる水質浄化技術において、その「ブレイクスルー」が、なかなかできない理由は、次の問題解決ができないことにある。
 @広範囲の領域に大量発生し、それが増殖し続けることから、その増殖速度に追いつく有効な除去法が見出せない。
 A多額の経費と運転費が必要となり、安価な技術が確立されていない。

 @については、最近、アオコを粉砕するために、1)超音波によるアオコが内包する泡と細胞の粉砕、2)高速で壁に衝突させることによる粉砕、3)紫外線による分解など、さまざまな方法が試みられているが、いずれも、その粉砕や除去の成功には至っていない。
 そこで、このアオコの除去による水質浄化においては、従来にない独創的な新技術の適用が必要と思われる。以下は、それに接近するためのヒントである。
 @大量なアオコを瞬時にして粉砕し、処理する方法を見出す。この場合、アオコの細胞群を粉々にして単一細胞化を行う方法と細胞そのものを粉砕してしまう方法の2通りが存在する。後者は、より難しく、その粉砕切断には、アオコの単一細胞よりもより小さい人工的な断刃必要となる。
 Aアオコは生き物であり、@の前者の場合は、細胞群が単一細胞に分解されても、時間が経てば再び合成を始めることから、これを許す技術なのか、そうではなく死滅に追い込む技術なのかの選択が重要となる。これは、粉砕切断後の処理問題と関係しており、そのシステムをどう構築するかの検討が必要となる。
 B植物根でアオコを吸収し、同時に、有機性窒素やリンをも除去するほうほうであり、この浄化法は、従来からさまざまな方法で試みられている。その意味で、このレベルでの植物利用法には新規性が認められないが、後述するように、マイクロバブルで特別の植物活性を誘起させて、植物プランクトンや窒素、リンの除去効率を飛躍的に高めることが可能となれば別の話となりうることから、この壁の突破法について今後詳しく検討する必要がある。





2.7 第7の壁-1



この壁は、「マイクロバブルの物理化学的特性の解明」であった。




 上述のように、マイクロバブルの発生には、さまざまな方法がある。筆者は、この発生法に依存して、マイクロバブルの物理化学的特性が発生することを「サイズ効果(図13参照)」と呼んでいる。この効果が生まれるのは、マイクロバブル以下のサイズの気泡であり、図1の分類法に従えば、それは、「マイクロバブル」と「マイクロナノバブル」となる(後述するように、「ナノバブル」については、その存在が明確に認められていない)。
 そこで、どのような理由から、いかなる「サイズ効果」が存在しうるかが問題となる。

(1)収縮特性

 
まず、マイクロバブルの収縮特性を検討することが重要である。筆者によって開発された装置(図3,4)では、10〜数十μmの気泡が発生するが、そのほとんどが発生後に収縮を開始する。この運動の発端は、マイクロバブルが発生する時に、装置内で負圧が形成されることから、発生後のマイクロバブル内の圧力が周囲よりも低くなることに起因している。
 しかし、一方で気泡が収縮すると、表面張力も増大するので、その分、より高圧状態へと移行する。南川11)によって、断熱変化状態で、1mmの気泡が1μmまで収縮すると、気泡内の圧力は約1000倍高くなり、このときの気泡内の密度は周囲液体と同一となることが示されている。これは、1μmの気泡では、気体としての物性を維持できないことを意味することから、すでに「溶解」を終えて、気泡は消滅してなくなったことをも示唆している。これでは、直径1μm以下のマイクロナノバブルも、さらには、より小さいナノバブルも存在しないことになる。
 

 
そこで、収縮過程にあるマイクロバブルの微視的観察が重要となる。図15に、収縮する気泡のスケッチを示す。これには、直径が20μm程度のマイクロバブルが上昇過程でしだいに収縮し、10秒程度の寿命を有しながら、消滅して最終段階に至る過程が示されている。これらの一連の過程を詳しく観察することで、次の3つの特徴が注目された。
 
 @マイクロバブルおよびマイクロナノバブルは、従来から考えられてきた球形ではなく、時々刻々、さまざまに変形しながら収縮する。この形状変化は、マイクロナノバブルにおいてより一層顕著となる。
 Aマイクロバブルの収縮は、気泡内の全体的な圧力の増加を促すが、一方で、上記のマイクロバブルが非球形を呈することは、気泡内の圧力の時空間的変化が起こっていることを示唆している。また、この圧力変化は、気泡内の気体の溶解過程にも関係していると考えられる。
 Bマイクロバブルの収縮運動には、それを開始する限界値があるはずであり、そのときの気泡径を「限界気泡径」と呼ぶが、これを明らかにすることが重要である。
 また、図16には、図15で示された気泡の直径の経時的変化が示されている。この場合、計測開始約2秒後から徐々に収縮し、マイクロバブルがマイクロナノバブルへと変化している。とくに、直径が7,8μm程度から急激な収縮が始まり、最終段階としての消滅を迎えているころが注目されるが、この消滅機構に関する詳細の解明が重要である。



             
         図13 気泡の「サイズ効果」                  図14 マイクロバブルの収縮概念


        
      図15 マイクロバブルの収縮過程のスケッチ            図16 マイクロバブル直径の時間変化



2.7 第7の壁-2

(2)溶解問題
 図17に、マイクロバブルの接写画像の一例を示す。これより、気泡は球体ではなく、右下方向に尻尾のような部分があり、そこから気体が噴出しているような様相を帯びている。この尻尾は、時間的にさまざまな形状を示し、より収縮すると、単に一方方向から噴出のみでない場合も存在していた。マイクロバブル内の気体の溶解は、その気液界面で発生するとともに、このような気体の噴出を伴う現象を含んで形成される現象と考えられる。この気体噴出の発生で、気泡内の圧力はより低下することから、実際の圧力は、上述の南川の計算結果よりもより低い値を示すことになる。
 同時にこの噴出現象は、よく言われる「気泡の圧壊」現象とは何かについても重要な示唆を与えている。「圧壊」とは、「気泡の収縮の最終局面で気泡内の圧力が最高に高まることで破裂する」という現象として解釈されがちであるが、実際には、このような連続的な気体の部分噴出が、さまざまな形態で連続的に形成されながら最終局面の「消失」へと導かれており、今後は、このような連続的噴出過程を含む現象をいうのか、それとも、それを含まない、あくまでも「消滅最直前」の現象をいうのか、その厳密な理解が問われるように思われている。
 以上を総合すると、マイクロバブルは、「自らの気体の噴出を伴う溶解現象を保持しながら収縮する気泡」といえ、さらに、「マイクロナノバブル」では、それがより激しく起こっている気泡と解釈されうる。
 しかし、マイクロバブルやマイクロナノバブルのなかには、上記の急激な収縮運動を呈しない、ゆるやかに収縮する気泡も観察されており、この気泡も含めて、今後より系統的究明が必要と思われる。
 なお、紙数の関係で、ここでは化学的特性についての検討を省略するが、これを加えると、さらに厳密で重要な理解が必要となる。

(3)ナノバブル存在の可能性
 上述のマイクロナノバブルの収縮過程において、筆者らが確認している最小気泡径は1μm程度であり、現状の計測システムでは、それが限界となっている。そこで、それ以下の気泡の理解については、推測の域を出ることはできないが、上記の計測限界程度の気泡が、さらに収縮して最終局面を迎えるのであれば、ナノサイズの気泡が存在しうることになる。この場合、時間的に非常に短時間であり、その程度の寿命しか持ち得ないことになる。また、他の物理的形態で、より寿命の長いナノサイズの気泡の存在がありうるかについては、より洗練された観察や計測が必要となるであろう。



                     
    
                         図17 マイクロバブルの接写画像



2.8 第8の壁



この壁は、「マイクロバブルの生理活性の解明」であった。




 
マイクロバブルの本質的特性のひとつとして、生物に生理活性を誘起させることが重要である。筆者は、そのことを、これまで、カキ、ホタテなど2枚貝において検証し、それが「血流促進」として最も顕著に抽出されうることを明らかにしてきた(上述の「第3の壁」の記述参照)。また、その後の究明の結果を総合すると、それは、単に2枚貝などの海洋生物に留まる特性ではなく、その対象として、微生物から人間、さらには植物にも適合しうることであることが明らかになりつつある12)13)
 そこで、本論では、人間と植物における2つの事例を紹介する。
 図18に、水道水においてマイクロバブルを発生させ、人間の手指における血流量の計測結果の一例を示す。これより、マイクロバブルを発生させると、毛細管(この場合、レーザー血流計で計測していることから皮膚より1mm下の毛細血管の血流量を計測している)の血流促進がなされ、マイクロバブル発生時の約1.5倍の血流量増加が示されている。この増加は、マイクロバブルが供給されている間維持され、マイクロバブルの供給を停止すると徐々に低下するが、しばらくは、供給前よりは上回り、そして供給前の血流量に至っている。
 さて、問題は、この血流促進がなぜ起こるかであるが、これは溶存酸素濃度の変化とはほとんど無関係に起こることから、それとは別の要因で起こることが推測される。このメカニズムの詳しい解明が非常に重要である。
 次に、図19,20に、マイクロバブルによる植物活性の一例を示す。実験に用いた植物の種類は、ホテイアオイであり、同一の水質条件で育成された。図19では、ホテイアオイの茎の成長比較、図20では、ホテイアオイの根の比較が示されている。このいずれにおいても、マイクロバブルによる植物活性の効果は明らかであり、茎の高さにおいては、最長96cmのものまで出現した。
 この茎と根のバランスを維持した大きな成長の要因は、簡単には、マイクロバブルが無数に根に吸着し、それが栄養成分の取り込みに何らかの好都合を与えた結果と考えられるが、これについても、今後詳しい解明が必要と思われる。
 以上のように、マイクロバブルは人体や植物においても、生理活性に関係する重要な結果を与えていることが注目される。






図18 マイクロバブルによる血流促進


    

図19 ホテイアオイの茎の成長比較              図20 ホテイアオイの根の成長比較



2.9 第9の壁



この壁は、「マイクロバブルの技術的確立」であった。




 これまで述べてきたように、マイクロバブルおよびマイクロナノバブルと、その周囲水には重要な機能性が存在しており、その技術的適用においては以下の問題が重要となる。
 周知のように、技術開発には必ず具体的な目標があり、それを達成するかどうかで成功の可否が決まる。マイクロバブル技術にもこの常識が適用されうるが、マイクロバブルおよびマイクロナノバブルの特性を活かすことによって、その技術的適用と確立を行うことが成功の基本となる。その意味で、マイクロバブルおよびマイクロナノバブルが示す物理化学的特性と、そのさまざまな作用の基本的特性を詳しく明らかにすることが最優先の課題といえる。
 以上を踏まえ、次の技術的課題について若干の検討を行う。
 @発生装置の改良・開発
 具体的な目標に沿って、高性能、小型、コンパクト、省エネルギー、低価格の装置開発をより発展させる。
 A発生方式とマイクロバブルの機能性の相互関係の解明
 マイクロバブルの発生装置が異なれば、発生したマイクロバブルは個性を有し、それぞれ異なった性質を示す。これが、筆者の基本的視点であるが、この視点から、発生方式の異なる装置から発生した、それぞれのマイクロバブルの諸特性を解明し、その類似点と相違を明確にする。この区別に関する検討は、すでに開始されており、上述の視点の正当性が明らかとなる結果がいくつか生まれている。また、この区別の根拠となる指標の明確化や方法の確立がしっかりなされることが重要といえる。
 Bマイクロバブルおよびマイクロナノバブルの特性を活かした独創的戦略商品の開発を行う。また、その基本となる基礎技術の確立を行う。その際、技術的には、マイクロバブルの発生で済む場合とマイクロバブルに池の適合物や技術を結びつける場合の2通りが考えられる。上述の血流促進による健康増進の事例は前者のケースであり、後者の場合は、その付加物がホテイアオイに相当する(この技術を、「マイクロバブル+α」の技術と呼んでいる)。この「+α技術」に相当する対象物には、かなりの数のものがあると考えられることから、その発見の核となりうる拡散的思考の具体的展開が切に期待される。



3.おわりに

 筆者は、2002年の6月に、マイクロバブル技術の有望な技術分野として、次の10項目を示した。

 @微生物の活性を利用する技術
 A飲料水、食料品質の改善
 B大規模自然閉鎖水域の水質浄化
 C健康福祉機器の開発
 D第1次産業における他分野への展開
 E廃水処理、各種反応装置の開発
 F機能性材料の開発
 G二酸化炭素削減技術
 H燃料液化・固化など省エネ技術
 I蛍などを利用した街づくりなど

 約2年後の現在において、それからの分野における取り組みや実践状況を総合的に分析すると、そのほとんどの分野で重要な究明が開始され、いくつかの成果も徐々に生まれつつあることが指摘される。その意味で、現在は、「マイクロバブル」という「一粒の種」が育ち、その蕾が花開く瞬間を迎えつつあるのかもしれない。残念ながら、その花の「繚乱」
を観ることや、「香り」を嗅ぐこともできないのが、「今日的状況」といえるが、それが、そう遅くない時期に訪れるように、より一層のマイクロバブル科学の究明と技術的発展がなされることが非常に重要である。本論が、その一助となれば幸いである。



参考文献

1)船井幸雄:断末魔の資本主義(2003)
2)大成博文:マイクロバブル技術の魅力と可能性、日本混相流学会第28回混相流レクチャーシリーズ資料(2003)
3)大成博文:マイクロバブル研究における「壁」、日本混相流学会第1回マイクロ・ナノバブル研究会講演論文集(2004)
4)日本経済新聞:サイエンス欄(2004.6.7)
5)渡辺和宏他:ベンチュリ菅による微細気泡発生装置の実験的研究、日本混相流学会年会講演論文集,p185(2004)
6)大成博文他:マイクロバブル技術によるカキ養殖効果,水工学論文集,46,p,1163(2002)
7)新井英明:牡蠣の生物学,共文社(1978)
8)大成博文他:混相流におけるマイクロバブル技術の役割,混相流,Vol.16,2,p.130(2002)
9)中山孝志他:マイクロバブルによる生理活性に関する研究,土木学会全国大会,第57回年次学術講演会発表概要集,497-498,2002.
10)道奥康治他:曝気形態と貯水池深層水質との関係について水工学論文集 第46巻pp.1091-1096(2002)
11)南川久人:第28回混相流レクチャーシリーズ講演集(2003)
12)大成博音他:マイクロバブルの生理活性,日本混相流学会年会講演会論文集,p.335(2004)
13)中田陽他:マイクロ・ナノバブルの植物活性による水質浄化,日本混相流学会年会講演論文集,p.339(2004)




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